はじめに
近年、NVMe(Non‑Volatile Memory Express)SSDは「SSD=NVMe」にとらわれず「SSD=NVMe」という語が飛び交い、性能を最大限に引き出すことが求められています。
Windows 10では「ネイティブドライバー」が一部制限され、汎用ドライバに落ち着かせられていたケースがあります。
Windows 11においては、システムがネイティブドライバーを自動で使用しない設定が残っている場合、性能を十分に発揮できないことがあります。
この記事では、レジストリを編集してNVMeネイティブドライバーを手動で有効化する方法をわかりやすく解説します。
コマンドライン(CMD)で一括設定できるので、初心者でも「一行ずつターミナルに貼り付けて実行するだけ」で完了します。
注意:レジストリを誤って変更するとシステムが正常に起動しなくなる恐れがあります。
変更前に必ずバックアップ(「レジストリエディタでエクスポート」)を取ってください。
1. NVMeネイティブドライバーとは?
1‑1. NVMeとは?
NVMeはPCIeバス上で動作するストレージプロトコルで、従来のAHCI(SATA)よりも低レイテンシと高スループットを実現します。
NVMe SSDを搭載したパソコンは、ゲームのロード時間やデータ転送速度が格段に向上します。
1‑2. ネイティブドライバーの役割
「ネイティブドライバー」は、PCIeインタフェースとNVMe規格を直接サポートするドライバです。
Windowsは多様なSSDを扱うために汎用ドライバ(SCSIベース)を標準で使用しますが、ネイティブドライバを有効にすると
- スループットの向上
- レイテンシの短縮
- 電力消費の低減
といったメリットが得られます。
2. なぜレジストリで有効化するのか?
Windows 11の標準設定では、以下の理由からネイティブドライバが無効化されるケースがあります。
- 古いBIOS/UEFI設定
NVMe BIOS設定が「Legacy」になっている場合、ネイティブドライバは使用できません。 - 互換性保護
いくつかのSSDメーカーは、特定のバージョンでネイティブドライバが不安定になることが報告されているため、Windowsが自動で無効化していることがあります。 - Feature Management(FM)による制御
WindowsのFeature Managementは、デバイスの機能をレジストリで管理します。
ここに設定された数値がネイティブドライバを有効にするキーとして残っています。
Feature Management キーの意味
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Policies\Microsoft\FeatureManagement\Overrides- ここに格納されたDWORD値は、特定の機能を強制的にオン/オフにします。
- 例えば
735209102という値は「NVMe native driver」という機能に紐づいています。 - 具体的な機能番号の意味は Microsoft の内部設計で決定されますが、**「値を1に設定すれば有効化」**という共通ルールがあります。
3. レジストリ編集手順(CMD版)
3‑1. コマンドをまとめてコピー
以下のコマンドをそのままメモ帳に貼り付け、.bat ファイルとして保存して実行するか、直接 CMD に貼り付けて実行します。
reg add HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Policies\Microsoft\FeatureManagement\Overrides /v 735209102 /t REG_DWORD /d 1 /f
reg add HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Policies\Microsoft\FeatureManagement\Overrides /v 1853569164 /t REG_DWORD /d 1 /f
reg add HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Policies\Microsoft\FeatureManagement\Overrides /v 156965516 /t REG_DWORD /d 1 /f
3‑2. 実行手順
- 管理者権限で CMD を起動
- スタートメニュー →
cmd→ 右クリック → 「管理者として実行」 - これによりレジストリへの書き込み権限が確保されます。
- スタートメニュー →
- コマンドを貼り付けて Enter
- 1行ずつ実行しても OK ですが、3行まとめて貼り付けて一気に実行すると手間が省けます。
- 再起動
- 変更を有効にするには、PC を再起動します。
- 再起動後、
デバイスマネージャー→ストレージコントローラ→ NVMe SSD が「ネイティブドライバ」になっているか確認してください。
3‑3. コマンドの各パラメータ解説
| パラメータ | 内容 | 例 |
|————|——|—-|
| add | キーまたは値を追加/更新 | reg add |
| HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Policies\Microsoft\FeatureManagement\Overrides | 目的のレジストリパス | – |
| /v | 値名 | 735209102 |
| /t REG_DWORD | データ型 | DWORD(整数) |
| /d 1 | 書き込むデータ | 1(オン) |
| /f | 確認ダイアログを表示しない | – |
4. 変更の確認方法
4‑1. レジストリエディタで確認
Win + R→regeditHKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Policies\Microsoft\FeatureManagement\Overridesに移動735209102,1853569164,156965516の3つの値が存在し、値が1になっていることを確認。
4‑2. デバイスマネージャーで確認
Win + X→デバイスマネージャーストレージコントローラ→ NVMe SSD をダブルクリックドライバータブ → 「ドライバの詳細」 → 「ドライバの有効化/無効化」- 「ネイティブドライバが有効になっている」メッセージが表示されれば成功です。
4‑3. パフォーマンステスト
- CrystalDiskMark や AS SSD Benchmark を使用して、読み書き速度を測定。
- ネイティブドライバを有効にした場合、従来より最大数%向上(実際の増加率はSSDモデルとPCIeレーン数に依存)。
5. トラブルシューティング
| 兆候 | 原因 | 対策 |
|——|——|——|
| 再起動後も速度が変わらない | NVMe SSD がレガシーモードで起動している | BIOS/UEFI で NVMe 設定を “Native” に変更 |
| ドライバがインストールされない | Windows Update が古い | 最新の Windows 11 にアップデート |
| エラー「アクセスが拒否されました」 | CMD を管理者権限で実行していない | 右クリック → 「管理者として実行」 |
| システムが不安定 | ネイティブドライバと SSD の互換性問題 | SSD のファームウェアを最新に、またはレジストリキーを 0 に戻す |
レジストリキーを 0 に戻す場合
reg delete HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Policies\Microsoft\FeatureManagement\Overrides /v 735209102 /f
reg delete HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Policies\Microsoft\FeatureManagement\Overrides /v 1853569164 /f
reg delete HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Policies\Microsoft\FeatureManagement\Overrides /v 156965516 /f
再起動後に元に戻ります。
6. まとめ
- NVMeネイティブドライバは、PCIe接続の SSD で最大のパフォーマンスを得るために不可欠。
- Windows 11 では Feature Management のレジストリキーで有効化を制御しているため、上記 3 行の
reg addコマンドで手軽に有効化できます。 - 変更は 管理者権限の CMD で実行し、必ず再起動してからパフォーマンスを確認してください。
- 何か問題が起きたら、レジストリキーを 0 に戻したり、BIOS 設定を見直したりして対処できます。
「NVMe SSD の性能を引き出したい」「Windows 11 で最高速を目指す」と思ったら、ぜひ一度レジストリ編集でネイティブドライバを有効化してみてください。
高速化の差がゲームや作業に直結するので、実際に違いを体感してみてください。